こんにちは
最近不思議に思う事があります。
CMで未だに、
「過払い金のご相談は、○○法律事務所へ。」
とかやってるのを見かけることです。
過払い金返還訴訟が盛んに行われ始めたのは、今からおよそ16年ほど前、2006年以降でした。
これは2006年の最高裁判決でみなし弁済が否定されたことに起因します。
▼みなし弁済とは?
さらに、2010年には、それまでグレーゾーンと言われてきた利息制限法の上限金利が20%以下と定められました。
ですから過払い金請求の対象となる借入金は、遅くても2010年以前のもの*注です。
*注 2010年以前でも、銀行のキャッシングなど貸金業者によっては利息制限法以下の金利で貸し付けていた場合は、もちろん過払い金は発生しません。
2022年現在、2010年以前から継続的に12年以上借り入れ・返済を続けているケースは少ないと思います。
ではなぜ未だに弁護士・司法書士事務所がやたらと「過払い金返還請求」を勧めているんでしょうか?
今回はその辺りを含めて、過払い金についての疑問を書いてみます。
過払い金とは?
そもそも過払い金とは何でしょうか?
簡単にいうと、利息制限法以上に払われた利息のこと。
例えば50万円を年利25%で借りると、利息は12,5万円になりますが
利息制限法の18%ですと、利息は9万円になりますので、12.5-9=
3.5万円が過払い金になります。
利息制限法と出資法
過払い金をより理解するために、利息制限法と出資法について説明します。
2010年以前まで、貸金業者はお金を貸し出す際に、利息制限法と出資法を遵守しなければなりませんでした。
利息制限法での貸付金利については、
- 10万円までは年利20%まで
- 10~100万円までは年利18%まで
- 100万円を超える場合は年利15%まで
と言う金利が決められていました。
一方出資法では、年利29.2%まで許されていました。
また、出資法には違反した場合、刑事罰が科せられましたが、利息制限法には明確な罰則規定がありませんでした。
そこで当時の多くの貸金業者は、罰則のない利息制限法を都合よく解釈し、出資法ぎりぎりの金利で貸し出していたのです。
この利息制限法の上限金利から出資法の上限金利の間を
グレーゾーンと呼んでました。
グレーゾーンは2006年までは、貸金業者に都合よく「みなし弁済」と
主張され利用されてきました。
今考えると「みなし弁済」なんて明らかに借主に不利な解釈を、
よく国が許してたなぁと思う。
当時は国も消費者金融業界と深くかかわりを持っていたんでしょうね。
消費者金融のほとんどが大手銀行の関連会社ですから。
ところが、前述したように2006年に「みなし弁済」が否定され、2010年には出資法の上限金利が20%までと法改正され、利息制限法の違反に対しても罰則(貸金業法違反として行政処分)が規定されるようになりました。
そこで、それまで不当に高い金利を支払い続けてきた借主から、今までの払いすぎてきた利息(過払い金)を過去にさかのぼって返還するよう求める訴訟が活発化してきたのです。
過払い金があるかどうか?
2022年現在、カードローンや消費者金融からのキャッシングを利用している方の中で「過払い金」があるのかどうか気になりますね。
過払い金があるかどうかの判断は、
- 2010年以前から年利20%以上で借りている
- 完済から10年未満である
と言う事が基本です。
2010年以前と言っても2007年にはすでに世情を察知して利息上限を20%
に切り替えている消費者金融があるかもしれません。*下表参照その辺りは
それぞれの取引履歴を見てみないとわからない部分ではあります。
グレーゾーン適用期限 | 利率 | |
---|---|---|
アコム | 2007年6月17日まで | 27.375% |
レイク | 2007年12月18日まで | 29.2% |
エポスカード | 2007年3月15日まで | 27% |
過払い金の対象にならない借入
そもそも過払い金の対象にはならない借入もあります。
【過払い金が発生していない借入】
- クレカのショッピング利用
- 銀行系のカードローン
- 住宅ローン、マイカーローン、奨学金等
- 2010年以降の借り入れ
などです。
また、武富士など消費者金融の中にはすでに倒産してしまっている会社からは、たとえ過払い金があったとしても請求することは不可能です。
過払い金があるかどうか調べるには
あなた自身に過払い金があるかどうかを調べるには、借入している金融会社から取引履歴を提示してもらうのが一番手っ取り早いです。
はじめから手数料払って司法書士や弁護士に過払い金請求を
依頼するつもりなら、すべてしてくれますけど。
取引履歴は個人でもできますし、金融会社は開示する義務がありますので何も躊躇することはありません。
開示請求してから、およそ2~3週間で履歴が送られてきます。たしか手数料は切手代くらいでした。
でも消費者金融の中には、請求理由をしつこく聞かれたり、書類が
届くまで1ヶ月くらいかかったところもありました。
請求理由はシンプルに「取引の履歴が知りたい。」でOK。
取引履歴には、通常債務者毎に貸付の契約について契約年月日,貸付金額,受領金額その他省令で定める事項が記載されています。もちろん約定利息、遅延損害金なども分かります。
取引履歴の様式は各金融業者によって異なります。たいていは上記のように細かく記載されていますが、中には不明瞭な履歴しか出さないケースもありますので、そんな時は自身の送金記録(銀行振込など)や領収書などに頼るしかありません。
過払い金額を知る方法
取引履歴があれば、過払い金の金額は司法書士等に依頼しなくても、あるていど自分でできます。
ある程度というのは、正確な金額は分かりにくいからです。
ですからここで紹介する方法は、目安としてとらえてください。
自分で引き直し計算して裁判所に提出した場合でも、間違いがあれば
裁判所の担当の方が親切に訂正してくれましたよ。
引き直し計算ソフト
私が実際に利用していたのは、有料ですがとても簡単で使いやすかったTDONの「利息引き直し計算ソフト」でしたが現在はダウンロードできません。
今使えるソフトは、
などになります。いずれもExcelが必要ですが、無料で計算できます。
ソフト自体は古くあまり更新もされていませんが、取引履歴
をもとに数字を入力していくだけなので簡単に利用できます。
ソフトの簡単な使い方は、別記事で紹介しますね。
過払い金の計算には、注意点もあります。借り入れが途中で分断されている場合や、
開示された取引明細が不明瞭な場合(冒頭0計算)、個人で計算するのが困難な場合
もあります。そんな時は専門家(弁護士など)に頼んだ方がいいかも。
取引の分断について、
冒頭0計算とは、
*注 過払い金の計算でよく見かける司法書士や、弁護士事務所のホームペー
ジ上の簡易計算では参考にできるほどの過払い金額を知ることはできないこと
が多いす。多くは個人情報を引き出すための手段として使われている印象です。
未だに過払い金のCMが多いのはなぜ?
冒頭でも書いたように、過払い金請求訴訟(裁判上は不当利得返還請求)が盛んに行われていたのは、2006年~2010年辺りです。
最高裁の調査資料によると、
過払い金返還請求 | |
---|---|
2006年 | 60045件 |
2007年 | 93286件 |
2008年 | 112027件 |
2009年 | 144468件 |
2010年 | 130177件 |
2011年 | 106185件 |
~ | ~ |
2017年 | 43414件 |
2018年 | 38636件 |
2009年の144,468件をピークに減少し続け、2018年には38,636件になってます。
訴訟の減少は、10年という時効にも関係しているから当然ですね。
それでは、ピークを過ぎた感のある過払い金返還請求のCMを何故未だに盛んに流しているのか?
CMすることにより、潜在的な過払い金訴訟を掘り起こしているという側面もあるでしょうが、実際に訴訟となる件数は知れていると思います。
実は、司法書士や弁護士事務所は、「過払い金訴訟」をきっかけに多重債務者をも掘り起こしているんでしょう。
たとえ過払い金が無くても、借金に悩んでいる人に、債務整理や破産
手続きを勧めることができます。
CMの「過払い金」というワードが、借金問題全般を得意とする司法書士や弁護士事務所の集客手段として使われているだけなんじゃないでしょうか。
まとめ
2022年の今、返済に苦労しているキャッシングがあって「自分にも過払い金があるかも?」と思っている方へ、
前述の過払い金発生条件を満たしていない限り、過払い金の発生する可能性はほとんどありません。
「過払い金は○○事務所へ」「過払い金かんたん計算」などの宣伝文句につられて安易に個人情報をさらさないようにしてください。
この記事を参考にしていただくだけでも、過払い金があるかどうかは判断できると思います。
また、仮に過払い金が発生しているとしても、自力でも訴訟できることをお伝えしておきます。
私が、過払い金訴訟を行った体験記や、自力でできる条件、注意点などもおいおい記事にしていこうと思います。
今回は以上です。
それでは
▼自力では不安という方は、やはり債務整理の専門家に頼りましょう。
アヴァンス法務事務所
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